オフィスの稼働を上げるリーシングとは

目次

オフィスをはじめとする事業用不動産においても、賃貸経営の最大の課題は『空室』です。 満室で購入したビルだとしても、退去がないという状態を継続するというのは、非常に難しく、空室を埋めるもしくは、空室を埋めやすい物件や埋まりやすい条件設定を作るということがビル経営には欠かせません。 空室期間をできるだけ短く抑え、いかに満室稼働に近付けるかというのがリーシングの基本です。

まず、オフィスのリーシングとは、不動産の収益性を向上させるため、立地動向調査(マーケティング)、テナントの構成や賃貸条件の策定など、サービス業務を含む仕事をいいますが、大部分は『客付』といわれる貸室を埋めるための行為となります。

1 リーシング戦略をたてる

一日も早く埋めるため、一日でも早く物件を募集をする、さあ募集をかけよう!というその前に、リーシング戦略を立てましょう。募集開始後だと、変更がしにくいこともあります。
また、スケジュールを立てることで、順調に進捗しているかの確認にもなります。
リーシングが予定通りに進捗しない場合、どのような方針変更をするかを決めるためにも、リーシング戦略を立てることは必要です。

  • STEP 1
    期待する金額で決まるか(マーケット調査)
  • STEP 2
    期待する期日に決まるか(家賃発生タイミング)
  • STEP 3
    ビルの価値を高めるテナント構成
  • STEP 4
    条件を決める

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期待する金額で決まるか(マーケット調査)

最終的に契約に至るか、期待する賃料で契約ができるかは、最も気になる要素だと思います。ローンを組んでいる場合はなおさらです。都心部の空室率は9割前後と著しい崩れは起きにくいので、賃貸条件を再検討することで、多くの物件は成約に至ります。
逆を言えば、都心部の物件は賃料設定さえ間違えなければ、ほとんどの物件は決まるということでもあります。郊外の物件は需要と共有のバランスが悪くそうはいきません。
空きが出たとき、需要と供給がどのようになっているか、まず確認しましょう。
条件が原因で埋まらないのか、そもそも条件に関係なく埋まらないのか、その状況を把握することは非常に大切です。埋まらないときに、賃料を下げるという行為に走りがちですが、そもそものマーケットの状況を把握することで、値下げ時期を検討するのに必要な情報が得られることがあります。
ビルオーナー様とリーシングについて話すとき、自分の所有する物件と競合になる物件の話になることがあります。自分のビルと類似性の高い物件が、市場にいくつかある場合が多いです。この物件が埋まると自分の物件が埋まるという順番があることが多いです。いつも、比較検討されるビルというのには類似性があり、その他社の物件に空きがある場合、その賃貸条件と比較検討することが非常に重要です。
一度賃貸条件を決めて募集を開始した後で、条件変更するというのは印象が良くないのと、先に出回った情報が独り歩きすることで、その後の客つけが難しくなるのは、避けたいところでもあります。
とはいえ、一日でも早く募集をすれば、早く決まる可能性は上がりますので、空き室の予兆がある時点で、いつでも募集が開始できる状態というのを作っておきたいところです。

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期待する期日に決まるか(家賃発生タイミング)

原則としては、『1日でも早く空室を埋めることを目標』に。
空室が発生したとき、基本方針は1日でも早く埋めるという考えで対応するのが良いと思います。『1円でも高く埋めるという目標』も、状況により発生しますが、それでも決まらないということには意味がないので、成約するターゲットとなる日付を決め、その日に合わせた条件設定をどうするかということになります。
一日でも早く埋めるというのは、焦って埋めるのとは違います。リーシング活動をする中で引き合いが増えれば、所有者として、用途・与信・賃料・家賃発生時期などを選択できる幅が広がりますので、長期的な視野でビル経営ができます。焦って安くし、意味もなく与信を緩くすることは、避けけなければいけません。 できるだけ高く・長く・安心できる入居者を選択できれば、再度空いてくるリスクも軽減されます。

一日でも早く埋めるためには、一日でも早く募集を開始する。

募集はいつから行うのがベストでしょうか。空室が発生したと確定するのは、入居テナントから解約申込や相談がなされた時点です。よく、原状回復が終わったら募集をするというスタイルをとるオーナー様もいますが、できるだけ早く募集をすることを考えると、解約と同時、もしくはそれ以前が理想と言えます。1日募集が早ければ、1日契約までの可能性が早くなるわけです。

オフィスリーシングのスケジュール
オフィスリーシングのスケジュール

前契約している期間に募集・内見をするとなると、入居者との協力が必要になると思います。退去条件などを入居者と調整する中でできるだけ協力的に動いてもらうことでリーシングがスムーズになることも多いです。居抜きなどの調整の場合、入居者が次の入居希望者を連れてくるというのも増えているように思います。リーシングに、入居者の協力は欠かせません。
また、市況が悪くなってくるとフリーレントの期間も伸びてきます。賃料が全く入ってこなくなるという期間が増えることを短くするためにも、動き出しを早くするということは効果的でもあります。

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ビルの価値を高めるテナント構成

無計画にいろんな業種のテナントを入居させることで、そのビルの価値を長期的に下げる場合があります。
雑居ビルというのは、響きが悪いですが、いわゆる飲食テナントビルなどではなく、様々なテナントが入居するビルという意味で使うのが正しいと思います。飲食でまとまっているビルは飲食ビルで、クリニックでまとまっていればクリニックビル・クリニックモールということになります。
一般的にテナント構成のまとまりは、ビルの価値を高めます。ビルの竣工時はどのビルも、コンセプトがあることが多いと思います。オフィスビルにはオフィステナント、クリニックビルにはクリニックが入居して欲しいのは、貸す側としては当然で分かりやすくあります。
ビルは必ず老朽化し、初期のコンセプトでビルのリーシングが困難になる時期が来ます。自身のビルのコンセプトについても、世の中の変化に合わせていくというのも大切なことなので、テナントの構成をどうしていくかについても、空きが出たタイミングで改めて考えて、必要であれば変えていかなければなりません。テナント構成の最適化を考えないと、レントロールの最大化を図ることは難しいと思います。
複数の業種がビル内にいてはいけないということではありません。1階はカフェ、2階は店舗、3階はクリニック、4~8階はオフィス使用というようにまとまりを作ればある程度品位は保つことができます。これが、8階に来店が入居すると、エレベーターの利用方法にも制約が出ることがあり、他の階が空いた時に、値下げをしないと決まらないという状況が生まれやすく成ります。
何棟か持っている所有者・管理会社であると、状況の変化を察知し、ビルのコンセプトを変化させていくことができますが、市況を正確に把握ができない場合、高くしすぎたり、逆に安くしすぎたりというのがあります。ビルアドでは正確なデータを提供し、オーナーのリーシング支援を進めます。
1日でも早く埋める、なおかつ貸主の希望する条件で契約することは、借主の利益と反するものではありません。逆に、入居者に比較的リーズナブルな家賃設定になることが多いというのもあります。需要と共有のバランスがあり、かつ同じ物件が2つとないビルという特性は、バランスの良い物件が選ばれることが多いのが特徴です。1日でも早く決めることは、借主にとっても良い条件を提示することができることにつながります。
多くのビルは竣工時コンセプトを作って、どのようなビルにするか決めます。オフィスビル・クリニックモール・飲食店ビルなど1つの業種、もしくは多彩な業種。空きが増えると、コンセプトにずれるテナントを入れなくてはいけなくなることが増えます。
この混ざるというのが、テナントリーシングでは次の空きが出たときにボディーブローになります。テナント構成は、ビルの価値を左右するため、単フロアーの家賃の高さで無理して入れてしまうということがあとで、ビル全体の価値を下げることがあります。用途だけではなく、与信の緩いテナントが入ることで、他テナントが懸念するケースもあります。
逆に、ベンチャーに優しいビルといった、ブランディングも存在していて、出世ビルみたいな呼ばれ方をするビルもあります。
テナント構成は、1フロアーの賃料ではなく、ビル全体の収益性にかかわる大きな問題なので、新しく空室が出る場合や、ビルの空きが目立ち始める時期に、どのようなコンセプトにビルを変えていくか、不動産業者と相談し、決めていきたいところです。

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条件を決める

募集条件は市場の中で相対的に高いと案内が増えないですし、安すぎると、貸主の不利益が生じます。そもそも、現在の市況に合わせて募集条件を作ったときに、現在入居するほかのテナントより安くなってしまうという矛盾が起きることもしばしばです。
決まらないと安くしたくなるものですが、競合の状況などを正確に把握し、どのような条件であれば、案内が増えるか、慎重に検討を進めるべきではありますが、時は金なりでもあり、できるだけ早く決定できる準備を、空き室が出る前からしておくことをお勧めします。
家賃は需要と供給で決まっていて、家賃を下げることは成約可能性を確実に高めます。
特に、都心部の物件は空室率が常に9割前後であり、需要と共有のバランスが著しく偏っている状態というのはあまり起きにくいので、値下げをすれば借り手が現れるわけです。とはいえ、ローンの設定や売却予定の場合、下限賃料の設定があると思うので、その設定でどのようにすればリーシングが可能かも検討が必要です。
郊外の需要が少ないエリアではそうはいきません。安くしても、需要が一切なければ契約に至らないわけで、需要が一定で現れるのか、1年の中で季節要素があるのか、年単位で再開発や需要増の要因が生まれるのかはしっかりと見定める必要があります。地方の物件を購入する場合、現在の賃料をもとに考えて、退去が発生するとリーシングに苦労するというのはよくあります。
自身の見立てが正しいかは複数の仲介業者の意見をもらうことができると良いですが、正確な情報をもとに判断することで、リーシングを有利に進めることができるようになります。

敷金を下げる

敷金を下げることで検討客が増えることは確かですが、敷金を下げることと与信をさげることはイコールではありません。最終的に対応や原状回復時の費用が回収できなくなっては元も子もありません。周辺の他の物件と比較して合わせていくのが良いと思いますが、回収リスクと隣り合わせというのは忘れてはいけません。
入居時審査に応じて敷金の金額を設定することや、保証会社をつけることで一定のリスクを軽減することもできます。保証会社をつける際に、保証会社そのものの与信と補償範囲と、家賃滞納が起きてからどのタイミングで支払いがされるのかは、保証会社を選択するうえで非常に大切なチェック項目です。

物件の募集

物件の募集は

  • 条件を決める
  • 募集図面、募集の一覧を作成する
  • 告知する
  • 内見立ち会い、条件調整
という流れになりますが、この一つ一つの精度が契約の成否に大きくかかわりますので、自身で物件の募集をする場合においても、信頼できるPM会社が見つかった場合にも、以下の記載項目を丁寧に行ってください。
時間はかかっても特定業種のリーシングをしたい、もしくは、賃料設定を高くしたいというような、スケジュールを原則重視しないスタイルが実際にはありますが、多くのケースで半年程度では決めていきたいということが多いと思います。
上記条件をもとに、先ず現実的に誘致可能な条件ラインかを複数業者に確認の上、どのような借主を誘致するのか、そのためには誰に何をしてもらったらいいのかというのが決まっていきます。条件のあたりをつける中で、様々な事情を整理する必要が出てくると思います。物件を買うとき設定したレントロールやローンの発生時期や金額もあるかもしれません。

2 テナント募集の実施

  • STEP 1
    図面の作成
  • STEP 2
    告知
  • ヒント
    賃貸仲介業者はどうやって物件情報を集めているのでしょうか
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図面(マイソク)の作成

物件を知らない人たちに、物件の良さを知ってもらう。そのためには多くの人に物件の情報を発信することが必要です。多くの人というのは、物件を探している企業とその企業をクライアントに持つ仲介業者です。
そのためには、募集図面と募集一覧を作成しましょう。通称「マイソク」と呼ばれるものです。募集図面の作成で大切なことは、借主にとって、良さそうな物件だなと伝わることと、紹介する業者にとって、紹介したい物件と思ってもらうことです。
写真をキレイにとって、コメントを登録して、条件を正確に記載、 図面をきれいに作り、分かりやすい地図を作るなど、一つ一つの精度を高めていくことで、物件が持つ魅力が伝わる資料が作成できます。
アットホームで条件を入れると自動作成できる機能もありますが、強調したいメリットを伝えるというのは難しく、できればオリジナルで作成する方が成約までは早いと思います。場合に応じて使い分けをすると良いと思います。
入居中の物件を募集する時、入居中の為室内の状態がイメージできないということがよくあります。前回引き渡し状態の写真をきちんと保管しておくことで、次回の募集も簡単にスタートすることができます。

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告知

事業用不動産のリーシングの成否は、条件の設定と告知にかかっています。市況にあった条件設定ができたら、あとは多くの借主となる候補者に物件を知ってもらうことです。

入居希望者はどうやって物件を探すのでしょうか。

① 歩いて探す
② ネットで物件を検索する
③ 知り合いの不動産業者に声をかける

実際には、知り合いの業者に声をかけるが最も多いかもしれませんが、②の物件をネットで探す行為は、探している本人も、その仲介をする不動産業者もおこないます。①の歩いていて見つかったというのは割とレアですが、あるにはあるので、看板についても物件の大きさがイメージできる工夫をしておくと問い合わせが増えます。

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賃貸仲介業者はどうやって物件情報を集めているのでしょうか。

賃貸仲介業者は

アットホーム・レインズの業者間ネットワークを活用
中堅大手の不動産会社は、一覧と呼ばれる管理系不動産会社の募集物件一覧を独自のデータベースに登録し、顧客に提案、WEBで配信
という方法で物件情報を集めています。
ですので先ずは、
  • アットホーム・レインズに登録
  • 大手・中堅不動産会社に情報を配信
することをお勧めします。WEBの掲載を希望しないケースを除いて、各社サイトにも掲載されます。営業マン毎の顧客に対しては、営業次第になるので、営業マン直での告知も定期的に行う必要があります。仲介会社全体のデータベースに登録し、営業マンにしっかりと情報が浸透していくために、メールの配信などをしっかり行っていくことが求められます。
私たちは、賃貸仲介業者への告知がリーシングの成否に大きく影響することを理解しています。大手・中堅不動産会社の営業毎のリストを正確に近い形で作成し、定期的に情報を配信することで、一日も早く依頼をいただいたオーナー様の物件が埋まるように支援したいと思っています。また、不動産営業マンの連絡先だけではなく、物件情報を登録する担当が各社いますので、その窓口の方に情報をお伝えすることができるように、その窓口の把握を行っています。

3 申込・契約・お引越し

  • STEP 1
    内見立会い・申込
  • STEP 2
    契約・物件の引き渡し
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内見立会い・申込

案内が増えるということは、ユーザーが見に行くに至る市場の物件に自身の物件が入っているということです。それが契約と直結するというわけではありませんが、契約に近づいているという一つのシグナルであるということに違いありません。
案内があるが決まらない。その理由があります。内見をした会社に直接意見をいけるということは非常にまれだと思うので、案内をしてくれた仲介会社にどのような理由で検討に進まなかったかを聞いてみると、競合している物件との差に気が付くことがあります。その情報をもとに、条件を調整していくことが成約につながるヒントがあります。
案内後の与信調査と条件調整において最も大切なことは、条件より与信ということです。
長年ビル経営を行っている貸主はよくわかっていることだと思いますが、賃貸借契約における、借主の権利は貸主より多くが認められており、入居後問題が発生したとしても退去を要請することは簡単なことではありません。
入居後の問題が起きにくい、問題が起きても解決する手立てがあるか、というのを判断軸に、条件と合わせて入居審査をしていくといいと思います。
賃料の保証会社が通ればあとは気にしないというケースもありますが、一通り役員構成だけでも反社チェックをかけることで防げるものもあります。ここでは記載できない内容ですが、いくつか入居時に確認をしておくと、滞納家賃の回収がしやすくなったり、退去の話し合いがしやすくなるということがあります。
与信調査は不動産会社に丸投げせず、自身でも判断をするということが必要です。

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契約・物件の引き渡し

賃貸借契約の契約は書面で行われますが、実際の契約着手という考えでいえば、鍵の引き渡しは非常に大きな契約行為の一つです。
与信調査・条件調整が終わり、重要事項説明・契約書の取り交わしが終わった後、賃貸借の始まりである、鍵の引き渡しが行われます。
鍵の引き渡しを受けたとき、引き渡し状態の確認は必ずするようにしてください。
住宅では必ず行うことですが、事業用不動産の引き渡しでは、現地での引き渡しが必ず行われるかというとそうでもありません。原状回復工事の査定の基本になることですし、思った状態でないということもあります。入居後しばらくして気が付いたりなどはトラブルのもとになりますので、相互に引き渡し状態の確認をすることをお勧めします。
退去時の原状回復工事の段階になって、トラブルに発展するということがあります。また、居抜きや部分的な設備譲渡がある場合など、入居中の設備トラブルにより、その壊れた設備の修理はどちらが行うかなどの問題が発生します。引き渡し状態はできれば写真に残し、オーナー所有の設備以外の、諸設備についてはその所有権についての記載を重要事項説明と契約書に記載することで、問題を防ぐことができることがあります。
入居時にしっかりと説明できていれば、トラブルを避けることもでき、オーナーとテナントの関係が悪化するというケースに発展することも未然に防ぐことができます。小さな負の積み重ねがテナントとの信頼関係を毀損して、退去に至ったり、より大きなトラブルの引き金になったりすることもありますので、入居前後の現地確認は怠らずに行っていただきたいと考えています。
ビルアドではリーシングの戦略立案に必要なデータの提供を行っています。早く・できるだけ高くリーシングするということは、入居者に求められる物件がどのようなものかを理解するところから始まります。早期のリーシングをすることは総じて、入居者に魅力的な物件を、最適な価格で提供することにつながると我々は考えています。個別のデータ提供もしております。

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