不動産とgoogleやYAHOOの検索における、キーワード連動型広告(以下、リスティング広告)の相性は抜群で、リスティング広告は主要な集客方法として多くの企業が取り入れています。
私自身も、この業界に入り今年で18年目となるのですが、オフィス仲介向けの広告だけでも、累計で10億円を超えるリスティング広告の運用(自社・外注を含む)を行ってきました。18年前に初めて広告の運用に携わったときの月額費用は80万位円でした。現在の運用金額は開示できませんが、最も多かったときは月額で1000万円を超える金額で、オフィス仲介業者のリスティング広告担当者の方なら、『へ―そうだったのか。』と思ってもらえるかもしれません。
そこで、今回こちらの記事では、オフィスという特殊な不動産でのリスティング広告の活用方法や、リスティング広告の運用代行を行う代理店について解説していきます。
すでに自社の集客方法としてリスティング広告を取り入れている企業も多いと思います。とはいえ、都心部、例えば東京・新宿・渋谷というようなエリアにおける、入札単価はきわめて高騰しており、渋谷の自社管理の物件に空きが出てきたとして、広告を出すかどうかはきわめて慎重な判断が必要になっています。
つまり、1物件のプロモーションにリスティング広告を活用するには、コストが高いということです。また、『渋谷 賃貸 オフィス』のようなキーワードで、1物件の単位のプロモーションを行うことは、クリックした後に離脱する可能性が高く、有効なプロモーション施策になることはまれです。リスティング広告を使うには、一定の物件数と収益性が期待できないと、投資対効果が合わないという結果になりやすいといえます。
リスティング広告は、GoogleやYahoo!で検索した際に表示される検索キーワードに連動した広告です。上図はGoogleとYahoo!で「オフィス 賃貸」と検索した際の画像です。
どちらもオフィスに関連するサイトのリスティング広告が多数表示されています。
リスティング広告は、自然検索結果の上部に表示されるため、ユーザーの目に留まりやすくクリック率が高い特徴があります。
オフィス関連のキーワードにおけるリスティング広告の掲載費用について、料金体系と費用相場を見ていきましょう。
リスティング広告の掲載料金体系は、クリック課金制となっています。表示された広告がユーザーによってクリックされると、1クリックあたりの単価が課金される形です。
リスティング広告はクリック課金式であり、クリックされなければ広告費用がかからないというメリットがありますが、クリックされやすい広告は品質スコアが高く広告上位化のアドバンテージが与えられます。また、クリック率やクリック単価、そしてクリック後のコンバージョン率を分析することで、広告の効果測定が容易である点も、リスティング広告の特徴となります。
リスティング広告の掲載費用相場は、オフィス賃貸系ワードだと、1クリックあたり数十円から数千円程度です。クリック単価は広告を出稿するキーワードや、競合他社の出稿状況によって変化します。平均値でいうと数百円といった感じにどの会社もなっているのではないでしょうか。
なお、月間の掲載費用相場は東京でいえばある程度の主要なオフィスエリアをカバーし、1ページ目の上位を目指した場合、200万円~1000万円前後になるのではないでしょうか。ただし、リスティング広告の費用はあらかじめ上限を設定できるため、これ以下での運用も可能ですが、現在の状況で数十万での広告運用をしようと思う場合、思った以上に早く広告が掲載されなくなる、もしくは他社の入札が激しく広告の表示が全く生まれないという状態になることもあるかもしれません。
リスティング広告以外のWEB広告で代表的なものがディスプレイ広告です。ディスプレイ広告はリスティング広告と同時並行的に運用されていることが多いのではないでしょうか。ディスプレイ広告は特定のターゲットや、自社サイトへのアクセス情報をもとにユーザーにバナー広告やテキスト広告を出すことができるので、不動産広告とは相性の良い媒体の一つです。
不動産業界の顧客となり得るユーザーの多くは、GoogleやYahoo!で「エリア名・駅名」や「事務所の種類(オフィス・事務所・SOHO・店舗)」や「賃貸」を検索する傾向が強いことを加味すると、リスティング広告がもっとも適していると言えます。
もちろん、他のWEB広告でもそれなりの効果を発揮できる可能性はありますが、自ら検索を行っている能動的なユーザーを対象とすることのできるリスティング広告の方が、広告としての効果や効率が高い運用を実施できるでしょう。
賃貸オフィスのような不動産とリスティング広告の相性が良いことを解説しましたが、さらにリスティング広告の効果を最大化させるためのポイントをご紹介します。
リスティング広告は、「オフィス」などのビッグキーワードほど多くの検索がされます。また、ビッグキーワードはターゲットとしないユーザーのアクセスも集めてしまう可能性があるため、効率的かどうかは一概に言えません。逆に、『○○駅 賃貸 オフィス』といったキーワードが、安いかというとそうではありません。エリアかけ合わせキーワードは人気エリアについていえば、オフィスといったエリアを含まないキーワードと比較して、クリック単価が高騰しやすい傾向があります。他社がどのように入札しているかなど、時間の設定なども工夫しながら、物件にマッチするリスティング運用を行う必要があります。
高騰するオフィス系賃貸不動産業界向けのリスティング広告は、永続的な改善を求められます。入札がないエリアであれば広告の必要もなく、検索結果をどのようにグーグルに認識して自然検索に掲載される対策をとればいいですが、競争が激しいエリアでは、運用データを分析して、広告の改善を継続的に行っていく必要があります。CPAを抑え、CVRを高め、費用対効果を改善していきます。
賃貸オフィス系のリスティング広告は高騰しており、gmailのリストを活用したターゲティングや、閲覧ユーザーのアクセス履歴をもとにしたディスプレイ広告などを組み合わせることで、よりターゲットに近い層に、できるだけコンバージョンに安価で近づくような施策を組み合わせることで、問い合わせ数を増やしていくことができるでしょう。
賃貸オフィス向けのリスティング広告を運用するにあたって注意すべきポイントを3つご紹介します。
オフィスは様々な場所にあるので、どうしても入札するキーワードが多くなります。我々も最初はあらゆるキーワードを入札していましたが、現在はそのような運用は行っていません。効果の高いキーワードに徐々に予算の割り当てをし直して、問い合わせ数につながる運用を心がけています。
事業用不動産の問い合わせ単価は高く、移転そのものの数が住居の引越のように多くないため、思った結果と違うということが起きます。また、オーナーや不動産会社によっては少ない物件数のサイトもあり、1件が数万~10万以上の獲得コストになることも十分に想定されます。リスティング広告で集客するというのはそれに見合うサイトである必要があるわけです。
広告の管理画面は非常に正しく動作していて、間違いはありませんが、実際の問い合わせ件数と一致するかでいうと、一致しないケースの方が多いかと思います。それは、電話での問い合わせが一定数発生するからです。
また、広告の閲覧者がオフィスを探す入居希望者だけとは限りません。仲介業者・競合ビルのオーナーやその他の利用者がサイトを閲覧します。
不動産サイトはターゲット以外の利用者が多数流入しやすい傾向があります。だからこと、正確な情報を得るために、広告やアナリティクスや顧客管理システムなどと総合的な状況を把握することで、有効な対策を打つことができると言えます。
代理店マージンは20%が最も多く、一律のところもあれば、マージン比率がもう少し安い会社もあります。20%というとなんとなく結構高いなというのが、僕が最初に代理店に依頼したときの印象でしたが、賃貸オフィス系の広告はキーワード数が多く運用工数も多くなるので、必要なコストとも言えます。妥当な金額はどこかは結局問い合わせの件数との比較になると思うので、いくらが妥当かは費用対効果を代理店の運用コストを含めて考えると良いと思います。
賃貸オフィスのリスティング広告は、他の一般消費財のような運用より癖があり、慣れるまで時間がかかります。そういう意味では代理店にお願いする場合でも、丸投げというわけにはいかない広告だと思います。
広告の管理画面内で起きていることが全てであれば、代理店にお任せすることが効果的かもしれませんが、オフィスの問い合わせはそこから営業活動がスタートします。ターゲットになる1件かそうでないかも大きいので、問い合わせの質も含めて、検証をすることで効果を高めていくことができるでしょう。
自社運用も個人的には好きですが、社内にリソースを複数人数さくことができる会社はまれだと思います。広告運用は個人に紐づくケースが多く、その人がいなくなるとわからないということが起きます。その時は代理店に依頼すればいいということでもあるのですが、代理店も1からスタートとなるので、ノウハウは失われやすくもあります。また、自社運用の良い点は、実際の問い合わせ件数を日々見ながら、運用をチューニングできることです。このメリットは非常に大きいため、社内の人員リソースがあれば自社運用はおすすめできます。
とはいえ、我々も運用をしている長い期間で、自社運営の期間は長くはありません。
代理店に運用を依頼するメリットも実際には大きく、代理店を利用するメリットを3つご紹介します。
自社で広告を運用するということは非常に工数がとられることで、兼務でおこなうことで、運用がおろそかになるということがあります。代理店であれば専門のスタッフが付くので、安心して依頼することができます。重要なのは、契約に結び付く問い合わせを増やすことなので、そのゴールに合わせて、代理店と密に連係をとると良いです。
広告の運用のことだけで言ったら、自社スタッフがかなうことは余りありません。毎日、複数社の運用をしているスタッフのほうが一日の長があります。代理店を使うメリットは、他社のノウハウを取り入れることができるということです。
リスティングは不動産広告において最もパフォーマンスの高い広告ですが、面を広げていく中で、リスティング以外の広告を活用していくことになるでしょう。Facebookやtwitterや様々なディスプレイ広告を一担当が網羅していくというのは難しいことです。自社で運用する部分と代理店に任せる部分を切り分けることも必要かもしれません。
最後に、
リスティング広告の運用画面を見たことはあるでしょうか。代理店が運用代行で利用するリスティング広告のアカウントが開示されるかどうかを必ず確認するようにしましょう。
私が運用を依頼してきた代理店全てにお願いしてきたことですが、広告のアカウント画面を共有してもらうことは非常に重要です。
運用アカウント自体は代理店が管理しますが、運用期間中にアカウント情報を共有してくれない代理店もあります。月次レポートのみで、どのような運用がされているかわからないというのは非常に問題があります。
また、契約終了後アカウントの移行ができるかも確認しておくとよいと思います。自社運用に切り替えることが来るかもしれませんし、何かしらの事情で代理店を変えるときに、アカウント情報を引き継ぐことができると、ノウハウを継承することができます。