移転エリアは、物件を探し始めるときに、最初に考えることが多い項目でもあるのですが、最も変わりやすい項目でもあります。
それはなぜかというと、オフィスの移転の目的と関係が薄いことが多いからです。
通勤交通費や住宅手当などの規定により、場所を変えることで、手当や補助が消える社員がいるなどの理由で、エリアは変えられないという、相談も受けることがありますが、結局のところ、今回の移転では近くの場所で見つかったとして、その次もうまいこと見つかるかというとその可能性はどんどん低くなっていきます。
エリアは企業イメージにも影響しますし、現在の社員の通勤ルートの変更も余儀なくされるので、変えたくないという気持ちはわかるものの、移転の目的を考える中で、変わりやすい要素でもあります。
オフィスの役割は何か。昨今のコロナ禍におけるリモートワークなどを通じて、急速に議論されるようになっています。
オフィスは経営者やその企業が考える仕事の在り方をよく表します。その仕事の生産性を上げる為、顧客に対してその企業が約束する価値を提供するために、必要な生産をする場として、オフィスはよりパフォーマンスよく機能しているかを考えるようにして下さい。
会社は一人で始めることができ、一人の時は自分の作業スペースと、居住地からの距離、業務費必要な設備を相互的に判断して、物件を決めることになると思います。選択肢としては、
の4種類があります。
会社の社員が増え、2名以上になると、そのメンバーが集まることができる場所にオフィスを構えるようになります。また、打ち合わせをすることも増えるので、打ち合わせスペースをオフィス内に設置することも多いでしょう。
社員が10人を超えるようになると、中途採用や新卒採用がはじまり、会社が顔見知りだけではなくなってきます。そうなると、プライバシーの確保が必要になったり、職場が単一の性別でなくなると、室外の男女別トイレが欲しいということになったりします。
社員の意見を聞くことも定着を含めて大切になってきますが、最後は経営者がどのようなオフィスにするかは判断しなくてはなりません。オフィスは会社の思いや方向性を示す役割もあります。
オフィスは会社の未来を象徴するもの、その判断をおこなうときに、ただコスト面での条件に偏った判断をすることはオフィス移転の失敗につながることになります。現在のオフィスの問題を解決することを大前提として、当面2年程度の事業の方向性を加味した、オフィスに求める条件をいかに設定するかということが大切です。また、場所に対するコストか、採用や生産性をあげる投資としての価値を見いだすかでも、そこに捻出できる金額は変わって来ます。
移転理由が明確になると、それに伴い、移転物件の条件が見えてくるはずです。物件の条件は、概ね以下の5つの要素で構成されます。
必要な広さなど、具体的な数値が感覚として分かる方は稀だと思います。現在と比較して条件を設定するという考えもありますが、広さは計測方法がオーナー毎に異なるため、間違えが発生しやすい項目でもあります。広さと賃料は関連性が強いため、賃料も同様です。また、賃料は広くなるに従い単価が上昇するという傾向が強く、倍の広さ4倍の賃料となることもあります。実測に基づいた、内装レイアウトを引くことで、賃料総額についてもおよそ正しいイメージに近づけます。
条件を決めていく際に重要となるのは、その優先順位です。もちろん全ての条件で100%希望に適う物件が見つかるのが理想ですが、現実にはある程度妥協しなければならない場面も出てきます。その際、それぞれの条件について妥協できる点、妥協できない点をはっきりと明確にし、さらには優先順位をつけておくことで、最終意思決定おけるブレが出ることも防げます。
理想の移転時期を考えるにあたっては、自身の都合と市場の状況があります。
まず優先すべきなのは自身の状況です。経営上、理想の移転時期は、ここまでで整理した移転理由と移転条件、優先順位などで明らかになっているはずです。契約の満了、社員の増減など、「いつまで業務生産性を下げずに対応できるか」を考えれば、自ずと移転の期限が出ているのではないでしょうか。
とはいえ、市況が自身の予算などと折り合わない場合が多々あります。オフィスの賃料相場の変動は非常に市場に敏感に反応します。賃料は不景気時には下がり、好景気時には上がります。移転理由がさほど差し迫ったものでない場合は、空室率や空棟率を参考にしながら、賃料相場の安い時に契約を行なうのに越したことは無いですが、オフィスの整備が遅れれば、会社の成長にも影響を及ぼす可能性がありますので、注意が必要だと思います。