オフィス移転費用にかかわる費用と計上

目次

オフィス移転費用の全体像を把握する

レイアウト変更では課題を解決することが難しい場合、オフィス移転となります。オフィス移転には、新旧オフィスの2つのオフィスにかかわる費用が発生します。どちらも費用としては少なくない金額が発生し、決算やキャッシュフローに大きな影響がありますので、2つのオフィスの両方の費用と資金繰りのマネジメントは必須です。

オフィス移転にかかる費用

新しいオフィスでの業務の開始に必要な費用
旧オフィスの原状回復工事・不要家具の廃棄

オフィス移転には、新旧オフィスの両方を忘れてはいけません。また、その費用項目ごとの支払い日時の確認は大変重要です。

工事費は前金であることも多く、敷金も契約時に支払いとなります。敷金の返金は原状回復工事を引いた形、もしくは、原状回復工事費用は前金で、数か月後に敷金が返還される場合もあります。総額での想定ではなく、どの時点で費用の発生がおこなわれるかも契約内容をチェックして確認をしておく必要があります。

新しいオフィスを借りること、現在使用しているオフィスの利用が終わり原状回復をして退去すること、それにかかわる諸々の手続きにかかる費用について、いつどのような費用が掛かることは移転検討時に把握し、できれば概算策定を行い、資金計画を立てるようにしましょう。

物件契約前
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契約時
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契約後
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入居時
 →
入居後
オフィスデザイン設計費敷金・仲介手数料・前家賃通信工事・内装工事・什器購入の発注引っ越し費用廃棄費用・諸手続き費用・旧オフィスの原状回復工事費用

上記のように「物件契約前」「契約時」「契約後」「入居時」「入居後」の内容が大きな項目としてあります。借り入れで賄う場合は銀行へ、リースなどを組む場合はリース会社に確認など、事前にすることで、いくらをキャッシュで用意するかと計画をたてることができます。

新しいオフィスでの業務の開始に必要な費用

オフィスを移転するときに、新しいオフィスに必要な設備は何かを整理することになります。似た広さでの移転経験がある担当者がいることは稀で、広くなるにせよ、狭くなるにせよ、オフィス探しは初めての出来事が多い業務です。規模によって、単価が高くなることが多いため、特に拡大移転の場合、思っている以上に費用が高くなります。また、見積金額が仕様が固まらない段階だと、どうしても高めに見積が出てしまいますし、業者によりみたもり金額も大きく異なるので、信頼できると思っている場合においても、必ず相見積もりをとるようにしましょう。オーナー指定と決まっている場合においても、適正な値段となっているかは確認をすることで交渉が出きる場合もあります。

オフィス移転にかかる費用の具体的な項目

敷金保証金とほぼ同義。賃料の6-12ヶ月が主流
賃料契約時に一定期間分の前払いが主流
仲介手数料不動産会社への手数料。賃料の1ヶ月分が主流
工事費新オフィス入居前に行なう、ビル・内装工事
什器・備品
購入費
新規に購入する、机椅子、OA機器など
引越し費引越し業者への支払い費用
保証会社の
保証契約料
賃料の1ヶ月程度

什器家具の相場感

机や椅子の値段はwebで公開されているのとは大きく異なります。1つ買うのと10買うのと、100買うのとでは大きく値引き率が変わるからで、複数の購入になる場合、webで購買する前に、内装業者に見積もりを取ることをお勧めします。ほぼ確実に、Webで検索しているより安くなります。

内装についても、相場感を理解している企業の担当者は稀だと思います。大手であれば、似た規模の営業所を複数個所携わる経験がある担当者もいるかもしれませんが、多くの中小企業では初めてかつ全くイメージがわかないものだと思います。

言い値で契約することで、相場より高い見積もりになっているということを後で後悔するようなことがないように、複数社の見積もりを取ることをお勧めします。

旧オフィスの原状回復工事・不要家具の廃棄

新しいオフィスの見積もりは考えをめぐらしながら、項目を積み上げかかる費用を積算することは忘れないと思いますが、現在使用しているオフィスの退去にも費用が掛かります。その見積は原則として、オーナーの指定業者となるので、価格は一般水準の提示となることが多いです。

原状回復とは、その名のままですが、借りた状態に戻すという意味で、日本のオフィスの引き渡し状態で最も多いのが、オフィス仕上げと呼ばれている、床壁天井が新品で仕上げられている状態です。この状態に、退去日までに直して返却するというのが、日本のオフィスの商習慣として最も一般的です。

重要ポイントは

退去日までに現状回復工事を完了されなければいけない。
費用はオーナー指定業者から出るので、思っているより高いかもしれません。

旧オフィスの原状回復工事費用・支払い

賃貸住居の多くの場合、原状回復費用はほとんどかかりませんが、賃貸オフィスでは、オフィス仕上げでの引き渡し状態が契約書面で交わされていることがほとんどです。そのため、自費で設置したパーティションや可動物をすべて撤去した後に、床壁天井をもとの状態に戻すという工事を行います。

工事は入居者負担で、貸主発注で行われます。その費用を貸主の請求に応じて支払うか、敷金から差し引くかという手続きが取られます。契約書面上は、敷金は差引かずに、貸主の請求に応じて支払うと記載があることが多いですが、確認をしてみると敷金から差し引いてくれることも多いです。差引いてくれない場合、工事前ないし工事完了から1か月前後で支払いを求められることが多いので注意が必要です。

原状回復工事は、実費を負担する話ではあるのですが、まれに相場より高めの請求が提出されることもあります。原則としては、請求に応じて支払いを行うということが必要ではあるのですが、内装業者などに妥当な見積もりかの確認を行ってもらうことをお勧めします。一般相場とかけはなれた見積の場合、交渉により費用が減額されることもありますので、内装工事をする会社に同じ仕様で見積をつくってもらうか、現状回復工事の減額交渉を行う会社もありますので、そのような会社を利用するという方法もあります。

不要家具の廃棄

不要家具はごみとして廃棄するケースと、中古として売却するケース、資源として売却ないし引き取ってもらうというケースがあります。

不要家具を単純にごみとして廃棄する場合、最も費用が高くなります。売れるものは売り、資源として出せるものは出し、どうしても価値が付かなかったものだけ、ごみとして廃棄することをお勧めします。

原状回復工事金額を減額・免除

原状回復工事の金額は本来であれば、契約時にある程度確認をしておくとよいです。金額表を契約書に添付しているオーナーもいますので、まずは契約書を確認すると良いと思いますが、多くの場合、項目までは書いてあったとしても金額の記載がない場合が多数です。

金額については、仕入れが変わりますし、原材料の単価は近年高騰しており、記載をすることで、逆にトラブルになることもあります。また、仕様として記載した品物が廃番になることもありますので、おおよその目安が書かれているということになります。

原状回復工事で金額がはねあがる修繕個所は、天井です。天井をはがして開放性を持たせるような内装が流行ったこともありますが、退去時にはその天井を元に戻さなくてはいけません。天井には照明器具もついていますが、天井をはがした際に照明器具も変更し、空調の移設増設を行うケースもあります。

天井をつけ、照明を元に戻し、空調も元に戻すというのは、かなりの出費となります。オフィスを借り内装工事をするときにはなんとなくわかってはいたものの、原状回復費用の見積もりをもらって金額が高い場合、多くは天井が関係していることが多いです。

入居時の工事を行う際に、退去の金額をある程度見積もっておく必要はあり、大企業の会計基準の場合、その原状回復工事費を減価償却の形で組み入れてある企業もあります。

とはいえ、原状回復工事は金額をシビアにみるというよりは、安心できる施工会社に発注するという傾向が高いのも確かで、金額が多少高くなりがちというのもないことではありません。

一つ一つの仕入金額を知っていると妥当な見積もりか、多少減額交渉ができるものなのか判断ができます。このような細かい部分は、自身で行えるものではないので、プロに依頼することがおすすめです。

移転における費用と会計基準

オフィス移転には、新旧オフィス合わせて多額の資金がかかります。

費用について、手元のキャッシュを使用する場合、銀行から借り入れをする場合、リースなどを部分的に利用する場合があると思います。多くの場合、その3つを組み合わせていることだと思います。

通信機器やプリンターの可動物品の場合、一般的にリースが多く、内装などの稼働しないものは、リースでないことが多いです。実際には、内装もリースが組めることがありますので、銀行借り入れか、リースかは会社の与信の範囲や、好みもあると思います。

新オフィスについて、かかる費用については、キャッシュか借り入れか、リースのどれかになります。オフィス移転を予定される企業は事前に金融機関やリース会社と調整をしておくことで、無理のない資金繰りを行うことができます。

収益を改善するための、コスト削減を目的とした移転であっても、一時的なキャッシュフローは悪化しがちですので、銀行の融資を受けて、資金に余裕をもった状態で移転を検討されるケースも多くみられます。普段から銀行とのお付き合いは大事にしておきましょう。

敷金(保証金)の返還時期について

戻ってくる敷金(保証金)を移転費用に目論んだ上で移転計画を立てるケースがありますが、敷金の返還は退去後3ヶ月、6ヶ月のケースが多く、どんなに早くとも退去と同時になるため、お金の流れとしては、そのまま移転費用に充当することは通常できません。

旧オフィスの減価償却残の一括償却

旧オフィスで利用していた家具やその他設備で、新オフィスにもっていかないものについて、減価償却期間が終了していなければ、原則として一括償却をすることになります。

リースなどであれば、残リースの金額を支払う必要が生じる可能性があるため確認を行った方がよいですし、キャッシュとして出ていかない場合でも、決算上は影響が出ることもありますので、償却資産ついてはチェックをしておくとよいでしょう。

原状回復工事の会計への組み込み

原状回復費用の会計処理は、中小企業、個人事業主と上場企業や上場企業の連結子会社で方法が異なります。多くの中小企業や個人事業主の場合、原状回復費用は「修繕費」として計上します。ただし、原状回復工事の見積書や請求書の項目を「原状回復」とすることが大原則です。原状回復費用であることが明確にわからないと、修繕費での処理が認められない場合もありますので、もし見積書や請求書の内容が「原状回復」となっていない場合は、業者に連絡し再発行を依頼するようにしましょう。

「固定資産(償却資産)」に資産計上しているものは「固定資産除却損」として会計処理、入居工事で固定資産(償却資産)建物、建物付属設備として資産計上し、オフィス移転先などに持っていかずに廃棄するものは「固定資産除却損」として計上します。

オフィス移転は日々の業務であるものではなく、特別なものと考えられますから原状回復費用、引っ越し費用などを「特別損失」として計上する方法もあります。

「修繕費」で原状回復費用を処理するか「特別損失」で処理するかは、株主や税務署、税理士への説明、税効果などを考えて判断するようにしてください。

上場企業や連結子会社の場合の原状回復費用

上場企業や連結子会社の場合は、資産除去債務を使って原状回復費用を処理します。

資産除去債務を簡単にいうと、将来負担すべき費用を事前に負債として計上するものです。

資産除去債務を使うと、将来負担することになる費用が財務諸表で事前にわかるメリットがあります。

平成22年(2010年)4月1日以降の開始事業年度より、国際財務報告基準(IFRS)に対応する目的で上場企業の会計基準として適応されるようになりました。

なお、連結子会社以外の中小企業には義務付けられていません。一連の流れをみていきましたが、いかがだったでしょうか。難しい部分が多々ありますので、資産除去債務を実際に行う場合は専門家の力を使うようにしましょう。

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