移転に伴う業務は多く煩雑です。保険や登記についてはある程度イメージはつくかもしれませんが、忘れがちなのが、消防の届け出や防火防災責任者の専任ではないでしょうか。
レイアウト変更により消防・排煙設備が不十分となったり、内装材交換により内装制限に抵触したりといった消防法違反につながらないよう、工事着手7日前までに「防火対象物工事計画届出書」を提出しなくてはなりません。
なお、居抜きオフィスを一切の内装工事なしにそのまま使用する場合は、既存の消防設備に問題がない限り、この届け出は不要です。
消防の届け出は、内装を行ってくれる工事業者が代理して行ってくれることも多く、自社では捺印だけという会社も多いかもしれません。また、貸室内の状況を全く変えない場合、消防の届け出は、前回されているはずだと思われるため、原則不要です。
というものの、前回の届け出がされていないとも限らないので、念のために居抜きなどで内装を引き継ぐ場合も、消防の確認はしておいた方が無難です。
届け出義務があるのはオフィス・事務所の借主ですが、刑事責任や損害賠償責任を負うのはビルの所有者であるため、ビルオーナーに多大な迷惑をかけることにもなってしまいます。
防火管理者は防火管理業務の推進責任者であり、防災管理者として必要な学識経験があると認められる場合以外は、防火管理講習を修了することが資格取得条件となります。誰でもなれるわけではなく、管理的または監督的な地位にあると同時に防火管理に関する知識を持ち、強い責任感と実行力を兼ね備えた人物であることが求められています。
提出期限は特に定められていませんが、遅滞なく提出するようにしましょう。また、併せて消防計画の作成および届け出も必要です。
なお、新オフィスの防火管理者となる人が旧オフィスの防火管理者を務めていた場合には、旧オフィスの管轄消防署に「防火管理者解任届出書」を提出することも忘れないようにしましょう。